SESの年収はいくら?市場相場とスキル別の収入格差を分析

お役立ちコラム

監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

SESエンジニアとしての年収は、スキルや参画案件によって大きく異なります。本記事では、SES業界の年収相場からスキル別の収入、さらに未経験者でも高年収を目指せる戦略までを具体的に解説します。

SESエンジニアの平均年収と年収幅

SESエンジニアの年収は、業務経験やスキルセット、担当フェーズなど多様な要素により上下します。業界全体で見たとき、年収の範囲は概ね300万円から700万円程度とされています。経験が浅く、運用保守やテストフェーズといった初歩的な業務に従事している場合は、年収が300万円台にとどまることも少なくありません。

一方、設計や要件定義といった上流工程を担い、プロジェクトリーダーやマネージャーの役割を果たしている人材は、600万円を超えるケースもあります。以下の表に、一般的な経験年数と年収の目安を整理しました。

経験年数スキルレベル年収の目安
0〜2年初級(運用・テスト)300〜400万円
3〜5年中級(設計・製造)400〜550万円
6年以上上級(要件定義・PM)550〜750万円以上

SESはプロジェクトに派遣されて働く業態であるため、クライアントの単価や所属企業の還元率によって、年収に差が出る点も特徴です。たとえ高単価の案件に参画していても、自社の取り分が大きければ、エンジニアに回る報酬は限定的です。このように、実際の成果や労働時間に見合った報酬を得るには、企業選びや契約条件の理解が不可欠です。

SESエンジニアの収入に影響する主な要因

年収に影響を与える要素は多数存在しますが、以下に代表的なものを挙げて整理します。

要因説明内容
案件単価高単価案件ほど高報酬に繋がる。ただし企業の取り分次第で実際の収入は変動。
スキル・資格AWS認定やJava Silverなどの資格保有により、評価・単価が上がる可能性あり。
所属企業の還元率一般的に還元率が高い企業はエンジニアへの報酬も多い。60%〜80%が理想とされる。
契約形態(正社員・委託)正社員は安定収入、業務委託はリスクと引き換えに高報酬が見込まれる。

これらの要素を意識し、ただ目先の収入ではなく、長期的なキャリアを見据えた選択が必要です。特に還元率の開示や案件情報の透明性がある企業は信頼度が高いとされています。

年収アップを実現するための具体的なアクション

SESエンジニアとして年収を向上させるには、継続的な学習と計画的な行動が不可欠です。とりわけ、以下のようなアプローチが効果的とされています。

  • スキルセットの拡張(例:クラウド、セキュリティ領域の対応)
  • 資格取得(例:LPIC、AWS Certified Solutions Architect)
  • 上流工程へのステップアップ(要件定義、PM補佐)
  • 評価制度が明確な企業への転職検討

さらに、エンジニアとしての市場価値を把握するためにも、定期的な自己評価や外部との比較(相場調査など)を行うことが望まれます。単に開発スキルだけでなく、顧客との調整力や提案力といったビジネススキルも年収に反映されやすくなっています。

転職で見落としがちなSES企業選びのチェックポイント

転職においては、企業の風土や実績だけでなく、エンジニアにとっての「働きやすさ」と「透明性」を重視する必要があります。以下の表は、転職先選定時に確認すべき主な項目です。

チェック項目内容
還元率の明示実際に手元に残る収入を左右するため、70%以上が理想。
案件選定の自由度自社が案件を一方的に割り振るのではなく、エンジニアが選べる環境が望ましい。
技術支援・教育制度社内研修、外部セミナー補助、資格取得支援などの制度の有無。
キャリア支援制度中長期的なキャリアパスが描けるか、またそのための面談や評価制度が整っているか。

これらに加え、実際にその企業で働く社員の声を確認するのも有効です。匿名でのクチコミや転職エージェントの情報提供を活用し、表面的な条件だけに惑わされない判断を行いましょう。

フリーランスSESという新しい働き方

フリーランスとして活動するエンジニアが増加しており、SES案件においてもフリーランスという選択肢は注目されています。フリーランスになると、契約単価からの控除が少ないため、手取り収入が大幅に増える可能性があります。

働き方月収目安年収換算目安備考
正社員SES25〜50万円300〜600万円福利厚生あり。安定性重視。
フリーランス50〜90万円600〜1000万円以上案件確保と自己管理力が重要。

ただし、営業活動や保険・税務管理など、自己完結しなければならない業務も増えるため、すべての人に向いているとは限りません。案件紹介エージェントや税理士との契約を活用することで、安定性を高める工夫も必要です。

SES業界の今後とエンジニアに求められる姿勢

SES業界は人材不足が続いており、今後も一定の需要が見込まれています。しかし、単なる人手としての配置ではなく、「価値を提供できるエンジニア」へのニーズが高まっています。特に今後は以下のような動きが顕著になると予想されます。

  • クラウド技術への適応(AWS、GCP、Azure)
  • 自動化・DevOpsの活用
  • セキュリティ対策の標準化
  • コミュニケーション重視のマネジメント志向

こうした流れの中で、SESエンジニアも従来の「指示通りに作業するだけ」の役割から脱却し、自ら価値を創出する姿勢が求められます。自発的な情報収集、技術習得、業界動向の把握など、プロフェッショナルとしての姿勢を持ち続けることが、収入面でも評価面でも大きな差となって表れます。

まとめ

SESエンジニアの年収は一律ではなく、さまざまな要因に影響されて変動します。特に、参画する案件の単価、エンジニア自身のスキルや保有資格、所属企業の還元率などが大きく関わってきます。年収の上限を引き上げるためには、以下の3つの視点が重要です。

  • スキルと経験を継続的に高める努力
  • 自分の市場価値を正確に把握する情報収集力
  • 条件の良い企業や案件を見極める判断力

フリーランスという選択肢も視野に入れれば、より高収入を得る道も開けますが、その分、自己責任も伴います。どの道を選ぶにせよ、重要なのは「自らの価値を意識して行動すること」です。

また、SES業界全体が少しずつ変化しており、エンジニアへの評価も成果や貢献度に基づく傾向が強まっています。企業側も、エンジニアの定着率や技術力の維持向上に本腰を入れ始めており、以前に比べると働きやすい環境が整いつつあるのも事実です。

このような背景を踏まえ、ただ目の前の業務に取り組むだけでなく、自身の将来像を明確にし、それに向かってスキルや経験を蓄積していくことが、長期的に見たときの安定した収入と満足感に繋がります。

これからSES業界で活躍を目指す方も、すでに経験を積んでいる方も、自身のキャリアを改めて見直す良い機会と捉え、年収アップに向けた一歩を踏み出してみてください。自分に合った働き方を選び、納得のいくキャリアを築くことが、SESエンジニアとしての真の成功につながるはずです。

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